2012.09.20 15:18

「大阪を変える100人会議」始動

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記者:德永裕也

NPOと企業、行政が協働を生み出す場となる「大阪を変える100人会議」が9月から発足し活動を始めた。それに先立ってスタートアップフォーラムが8月28日に「住之江ショッピングセンター『オスカー・ドリーム』」(大阪市)で開かれ、会場にNPOなどで働く社会的事業者、公務員、学生など126人が参加した。

 第1部で高橋英樹住之江区長が「マルチパートナーシップで担う大きな公共について」と題して講演。民間団体と行政の対等なパートナーシップを結ぶ意義について話した。第2部は、地域課題を解決するために活動するNPO法人代表の3人(「Homedoor」川口加奈理事長▽「み・らいず」河内崇典代表理事▽「Co.to.hana」西川亮代表)と、高橋区長がパネリストとなり、実際にNPOと行政が協働するときに感じる壁などについて意見を交わした。
民間主体の大阪を取り戻そう

大阪のホームレス問題と放置自転車問題の解決を目指す「Homedoor」の川口理事長(大阪市立大学4年生)の「行政の決済の遅さが、スピード感のあるNPOや企業の協働を阻害しているのでは」という意見に対して、「市政改革によって、区で決められることが増え、迅速に決定できることが増えた。それでも他人様のお金を他人様のために使うのが行政なので、運用に慎重なのは事実。しかし長期的にはもっと迅速に決済できるように市民の寄付からなるファンドを作りたい」と高橋区長は答えた。

 さらに区役所主催で区民同士や区民と行政とがざっくばらんに情報交流する「ラウンドテーブル」の開催や、自身のツイッターなどでも区に対する要望を直接集めることを話した。

 同会議の設立背景は、橋下徹市長らにより大阪府市政が政治主導で改革されてきたこと。行政のシステムが変わるのに対して、行政依存から市民主体による協働への変化の必要性を感じた社会的事業家有志が、行政と連携し、大阪の地域課題を解決するためのプラットホームとなることを目指している。会議は、現場で実際に活動しているNPO法人の代表などで構成される。教育や福祉分野などでの課題解決の企画やNPOや企業と行政の連携強化も目指す。

 会議発起人の一人で、大阪でキャリア教育事業に取り組むNPO法人「日本アントレプレナーシップアカデミー」の山中昌幸代表理事は「大阪は、商人が私財で橋を架けたり、地域教育のために、大阪大学の源流の一つである懐徳堂を建てたりするなどもともと市民主体の土地柄。それが、戦後は行政に依存してきた。政治主導で大阪が変わろうとしているときに、我々市民の側からも声を上げ、主体的に協働して変えていかねばならない」と話す。

 参加者の多くはフォーラム終了後、会場が閉まる直前まで、周りの参加者と活発に意見を交換していた。参加した住吉区の男性職員(31)は「大阪で活躍されている団体の思いを聞くことができてよかった。各分野で活動されている団体をつなぐ役割を、信頼のある行政が果たしていければ」と話していた。

大阪を変える100人会議
http://osaka100kaigi.com/

〈取材後記〉

フォーラムの司会者で、SIO(ソーシャル・イノベーション・大阪)ネットワーク代表の施治安(せ・はるやす)さんという方がいる。施さんは、社会起業家精神を持った人のつながりを作るために尽力している方だ。関西の社会的事業家やその卵である学生や支援者500人以上からなるSIOネットワークメンバーとは、メーリングリストやFacebookグループ、新年会など定期イベントでの交流でつながっているこの100人会議はSIO有志が、施さん宅に集まって構想を練ったところから始まったそうだ。そんな施さんが最後におっしゃった「様々な分野の方をつなぐ役割を果たす人たちが、それで飯を食える世の中にならないといけない」という言葉が印象的だった。

 社会が成熟し、そこにある課題が複合的に絡み合っている現代は、単に諸外国や諸地域の取り組みをまねるだけでは解決できない。だからこそ社会のシステムを作る行政は、課題の最前線に立つ民間各分野のスペシャリストの力を結集して、最適解を求めることが今まで以上に必要ではないか。

(学生通信社 同志社大学 徳永裕也)

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記者プロフィール

德永裕也

德永裕也

役職 : 元企画部リーダー
卒業 : 同志社大学法学部
出身地 : 石川県加賀市
誕生日 : 1989年8月3日
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