昨今、イーコマース(電子商取引)は人々にとって当たり前のものになった。実際に、インターネットコム株式会社が2010年にインターネットユーザー300人を対象に「ネットショッピングの経験はありますか」との質問を行ったところ、「はい」と答えた人は96.3%(289人)にのぼった。しかし、1度は接したことのあるものの、きちんと利用できていないユーザーは少なくないのではなかろうか。そこで今回は、イーコマースについてほとんど初心者という現役大学生の橋本が、利用するにあたり気をつけるべきことや今後の可能性などの話を、ショッピングカートASP(Application Service Providerの略)を通じてイーコマース事業者のサポートを行う株式会社フューチャーショップの代表取締役、星野裕子さんに聞きました。
--まず、私はネットショッピングをときどき利用するのですが、正直どのサイトも同じように見えます。何か良いサイトを見分けるための方法などはありますか。
絶対に確認する必要があるのは特定商取引法の表示の有無です。これがわかりやすい場所に書かれてあるということは重要ですね。送料や配達日がわかりやすく明記されていることも大前提で、プライバシーポリシーがあれば、きちんとしたショップだと言えます。それ以外にも、サイト内にその商品を販売する人の顔写真があるかどうかは、サイトの信頼度をはかる上で好材料になると思います。一般的に、顔写真を掲載しているサイトのほうが信頼をおくことができます。
--なるほど。現在、僕は大学で経営学を勉強していて、将来は起業したいとも考えているのですが、これからイーコマースで事業を行いたいと思ったとき、どういった工夫が必要ですか。
イーコマースだからこそできることには果敢に取り組むべきです。たとえば、商品が出来上がるまでの過程を、写真を掲載するなどしてユーザーに見てもらうのは面白いと思います。ただし、たしかにテクニックは必要ですが、それだけでは商品は売れません。自分が信念を持って売ることのできるものを売ることが大事です。イーコマースはあまり初期投資がかからないと思われがちですが、実際にはビジネスのノウハウを勉強するための費用と時間がかかります。世の中にこの商品を広めたいという熱意が何より大切です。
--星野さんが今のビジネスを始めたそもそものきっかけを教えてください。
私は、もともとリサーチ会社に勤めていたのですが、90年代の末に起こったITバブルを背景に、楽天などのショッピングサイトが台頭してきました。当時、ネットで物を売ることに関して世間では疑問の声もあったのですが、ネットを通じた物販に可能性を感じ、そこから縁あって今の会社の関連会社である株式会社フューチャースピリッツに転職しました。当社が設立されたのは2010年の3月ですが、フューチャースピリッツより分社という形でした。フューチャースピリッツ時代の2003年10月に、future shop というショッピングカートASPサービスをリリースし、2006年11月には、利用者の声を反映し、さらに機能性を高めたfuture shop2をリリース。それ以降、時代に合ったサービスをお客様に提供し続けており、現在では1300を超える店舗のサポートを行っています。
--では、実際にイーコマース事業者のビジネスをサポートする上で、こだわっていることは何ですか。
当社では他の多くの企業とは違い、電話応対など人を介したサポートにこだわっています。また、会社がお客様にとって本当に必要な存在であるかということは、いつも念頭に置いて考えています。お客様をすぐそばでサポートすることによって、ニーズやトレンドをキャッチするという双方向のコミュニケーションも大事にしています。お客様から学ぶ発見も多いですよ。
--これからのイーコマースの可能性についてはどのようにお考えですか。
イーコマース市場はこれからますます成長していくと思います。また、イーコマースといえばPCが主だったのが、最近ではスマートフォンの台頭で、より手軽に買い物ができるようになりました。今後はテレビで買い物をするということも可能になると思います。イーコマースそのものが店舗に直接行って買い物をするのとは変わらないような存在になると思います。
--このような幅広い可能性があり便利な一方で、なかなか利用することに対し踏みとどまっている人もいます。イーコマース利用者の裾野を広げるにはどうすればよいと思いますか。
1度イーコマースで買い物を経験すれば、その便利さが分かると思うので、自然に広がると思います。ただ高齢者に対しては接点をきちんと設けないと、なかなか広がらないのかなとも思います。動画を通じてその商品をうまく紹介するなどの工夫があると面白いと思います。
--最後に星野さんの今後の目標を教えてください。
私自身、イーコマース利用者のサポーターになり、社会に対しても利便性をより広めていきたいと考えています。企業としても、システム面だけでなく、セミナーや勉強会を定期的に実施したりして、お客様と密なコミュニケーションをとっていきたいと思います。企業の理念である“Happyをシェア”することを常に意識し、社会にイーコマースを通じて喜びをもたらせたらなと考えています。
(取材・記事:学生通信社 関西学院大学 橋本翔一朗)
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