経営コンサルティングを行うプレジャーサポート株式会社(大阪市中央区)は、障がい者の自立をめざしたプロジェクト「ソーシャルズ」に取り組んでいる。このプロジェクトはスイーツの商品開発やパッケージデザイン、販路開拓に関しては同社が担当し、障がい者が作業所で製造に集中できるようにする試み。魅力的な商品を開発することによって、作業所で働く障がい者の賃金向上も目指す。町孝幸社長に、障がい者支援の思い、「社会貢献型商品」を生み出す「ソーシャルズ」を始めるきっかけや今後の展望について聞いた。
無限に広がるありがとうのために
――ソーシャルズを始めたきっかけは
「昔から障がい者支援やボランティアに興味があったわけではない。障がい者施設が開催するバザーに行って目が合ってしまうと、同情で商品を買わなければならないと思うので出来るだけ行かないようにしてきた。意識が変化したのは、福祉施設の理事長と出会ったとき。理事長に作業所で作られたお菓子を勧められ、食べてみると心からおいしいと思った。そこで詳しく話を聞きたくなり、障がい者の生活の実情を知った」
――障がい者の生活の実情とは
「大阪市には約150施設、障がい者のための作業所がある。そのほとんどでお菓子づくりなど障がい者が働ける環境を整えているが、作業所からの収入としては月に1万円程度しかない。障がい者は、障害者年金と作業所からの給料を収入として生活をしている。障がい者にもさまざまな暮らし方があるので、作業所からの収入が高いか低いかは単純には判断しづらい。しかし働いた分の対価が今のままでいいのかと思っている」
――目指すところは
「障がい者の収入を増やしたいと思う。今まで出会った障がいのある子どものお母さんからは『自分が先に逝くことを考えると、そのあとが心配で仕方がない』という声も聞いた。障害者年金と合わせて自分で生活できるだけの収入が得られるように支援していきたい。最低でも障がい者作業所での収入として5万円くらいになるのが目標だ。同時に障がい者にも働きがいを持ってほしい。働くということは、誰かの役にたつということ。そのことによって、『ありがとう』と言ってもらえる。貨幣経済では、ありがとうの気持ちがお金という形になって返ってくる。障がい者は普段『ありがとう』と言われることよりも、言うことの方が多いのではないかと思う。障がい者に、お菓子を食べた方や購入された方の『ありがとう』を伝えたい」
――どんな人に買ってほしいか
「無理に何かをしようとするのは、継続しない。なんでもいいので、特別に何かをするというのではなく取り組んでほしい。また同社としては、一般の方が百貨店でお菓子を買おうと思った時に、ソーシャルズが販売しているスイーツは味を厳選しているので『どうせならこっちで買おう』とソーシャルズを選ぶくらいの気持ちになっていただけるような商品を作りたい」
――今後の展開は
「ソーシャルズはものを売るので、もらえる『ありがとう』、渡せる『ありがとう』が無限に広がる可能性がある。何千個という数の依頼を受けることがあるが、現在の作業所としてはそこまでの生産体制はないため、そのギャップを埋めるような工夫をしていきたい。一般の方の『どうしたら障がい者の支援をできるのか』という声に応えるためにも、現在のネット販売だけでなく、『ソーシャルズ』としてお店を出したい」
(学生通信社 同志社大学 井上直紀)
〈取材後記〉
今まで障がい者の話を聞くたびに、何か手伝うことができたらと思っていましたが、日がたつとその気持ちが薄れてしまっていました。しかし、それは支援ではなく、ただ自分の心を満たすためのものだったのかもしれません。町社長もビジネスとして継続して続けていくという志を持っていらっしゃるように、自分も一回一回は小さなことでも、続けることを大切にしていこうと思いました。
また、私の将来の夢はクルマを作って人に夢と感動を持ってもらうことですが、以前は特に子どもに対して夢と感動を持ってもらうことを意識していました。しかし、今回の取材を通して、私が出来ることは障がい者に夢や感動、生きがいを少しでも感じてもらうこと、だと感じました。
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