2014.04.24 09:50

大人は立ち入り禁止、小学生がつくるまち

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記者:井上直紀

2013年11月2、3日に天王寺区民ホール(大阪市天王寺区)で子どもたちがまちをつくるイベント「キッズシティ天王寺」が開催された。当イベントはまちづくりのワークショップを通じて若者にキャリア支援を行うNPO法人cobonが、小学生に職業観や人生観を考えるきっかけを与える「こどもまち事業」の一つ。12回目になる今回は、若者の人材育成を重視した「文教都市」を目指す水谷翔太区長(29)と連携して開催された。同団体の松浦真(まつうら・まこと)代表理事に同イベントを開催したいと思ったきっかけ、今後の展望について聞いた。


2日間行われた「キッズシティ天王寺」には延べ160人の小学生と40人のボランティアスタッフが集まった。子どもたちはネイリストやカフェ、区役所や郵便屋など28の選択肢から自分の体験したい職業をハローワークで選ぶ。そして働いた分の給料をまち独自の通貨「キット」で受け取り、今度は自分がお客さんとして買いものなどをして楽しめる。

まちには小学生の参加者とスタッフのみが入り、保護者は入場することができない。子どもが保護者に頼らず、自主的に活動するためだ。スタッフも安全面以外では子どもに指示を出すことはない。

質問を受けてもすぐには答えず、一緒に考えて解決策を探す。郵便屋をしていた子どもは、はがきの投函が少ないのをスタッフと相談し、「どうすればいいかな」というスタッフからの質問に「自分から手紙を書いて返事をもらう」というアイデアを思いつき、投函数を増やした。

参加した子どもに感想を聞いてみた。当日クレープ屋さんをした小学2年生の男の子は「お客さんが来てくれるのがうれして、将来はクレープ屋さんになりたい」と、将来の夢ができたことを話してくれた。ネイリストをしていた小学5年生の女の子は「母がしているから私もしてみたいと思いました。忙しかったけどお客さんがすごく喜んでくれるのが良かったです」と、しっかりとした口調で話した。

「商店街」の担当スタッフとして参加した油谷雅次(あぶらたに・まさつぐ)さん(62)は「時間がたつにつれて商品の売り方が上手になってきました。最初は周りを見られていなかったが、だんだんとお客さんに目が向くようになり『これいいですよ』と声をかけるなど、商売人らしくなってきました」と子ども達の成長の早さに驚いていた。

また区役所の担当スタッフとして参加した高校生の三砂桃佳(みすな・ももか)さん(16)は「小学生には自由な発想がありますね。例えば『区長選挙』では、誰に投票するかを参加者一人ひとりのところに行って、ポスターにシールを張ってもらっていました」と話す。三砂さん自身、小学生のときに今回と同様の同団体主催のイベント「こどもまち事業」に参加した。その時楽しかったのが忘れられず、高校生となった今、「スタッフとして参加したい」と思ったという。

松浦さんは2007年に仲間と3人で同NPOを立ち上げた。大学卒業後に就職したとき、過剰に利益を追い求めることに疑問を感じていたからだ。働くとは何かを深く考えるようになり、誰もが幸せに働ける社会にしたいと思ったという。

そこで、多くの子どもに自分の将来や就きたい仕事をできるだけ早い時から考えてほしいと思い、小学生を対象とした「こどもまち事業」を開催した。松浦さんは「遊びを通して、好きなことを仕事にできる楽しさや、仕事を通して人に喜んでもらえることを学んでほしい」と話す。今後は大阪市内の全区で開催し、もっと多くの子どもたちに仕事や町のことを身近に考えてもらいたいと思っているそうだ。

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記者プロフィール

井上直紀

井上直紀

役職 : -
在学中 : 同志社大学理工学部 (4回生)
出身地 : 大阪府泉大津市
誕生日 : 1990年7月22日
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