2014.04.25 20:29

これが次世代の勢い TEDxYouth@Kyoto2013

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記者:笹山大志

登壇者のパワーに終始、圧倒された。6月30日、京都市左京区の京都造形芸術大学で京都大学をはじめ、地元の9大学の学生が主体となって運営するカファレンスイベントが開催された。12組の登壇者たちが革新的なアイデアを披露する「TEDxYouth@Kyoto2013」。テーマは「Possibility of Ideas」。未来を担う若者を刺激し、日本社会を元気にするのが狙いだ。登壇者や学生を中心とする参加者から刺激をもらおうと、私もイベントに参加した。その模様をレポートする。


会場には、大学生や大学教授、日本で暮らす外国人など150人が集った。いずれの参加者も招待を受けた人や選考を突破してきた人たちだ。それぞれの価値観が国籍や世代を超えてぶつかり合い、そこから新たなアイデアが生まれる。参加者同士で語り合う客席の様子からはそんな雰囲気が醸し出されていた。

 TEDxとは「よいアイデアを広めよう(Ideas Worth Spreading)」を理念に活躍する非営利団体「TED」(アメリカ)の精神に共鳴した人々が世界各国で独自に運営するイベントだ。

日本では早稲田大学や東京大学などでも開催されたが、今回のTEDxYouth@Kyoto2013は多くの学生が学ぶ京都で、地元の9大学の連携で運営されているのが特徴だ。プログラムはプレゼンタイムの1時間と親睦会の45分が1セッション。親睦会は登壇者と観衆、運営メンバーなど参加者が自由に交流でき、計3つのセッションがある。

印象的だったのは、3セッション目で登場したホームレス問題に取り組むNPO法人「Homedoor」で理事長を務める川口加奈さん(22)のプレゼンテーションだ。大阪の2大問題であるホームレスと放置自転車問題をHUBchari(ハブチャリ)事業で解決するというアイデアを披露した。

HUBchariは自転車貸出・返却拠点を街中に設け、そこであれば1時間100円でどこでも借りたり、返したりできるシェアサイクルシステムだ。自転車管理や修理をホームレスが担う。
「ホームレスの雇用創出とともに放置自転車問題の解決を目指す、気持ち良い大阪の街づくりに必要な取り組みです」と川口さんは話した。

紙芝居師として活躍する京都外国語大学3年生いっきゅうさん(芸名)(21)も昔ながらの自転車紙芝居を使ったパフォーマンスを披露し、心に残った。

昭和初期の紙芝居の名作「黄金バット」を実演しながら「みなさんの声を合わせて黄金バットに助けを求めましょう」と呼びかけると、観衆も大きな声で応える。演者と客席のセリフの「かけあい」で、双方向のコミュニケーションが生まれた瞬間だった。

いっきゅうさんは声の高低、緩急を使い分けながら、黄金バットの笑い声を表現し、会場の笑いを誘った。実演後、いっきゅうさんは「携帯電話や音楽プレイヤーなど技術が進歩することで自分の世界に籠ってしまう人が多くなった。人と一緒に笑うこと、人と接する時間の大切さを紙芝居で広めたかった」と語った。

登壇者の大半が英語でスピーチを行う。観衆の頷きや笑い声から、改めてグローバルなイベントであることに凄みを感じた。

プレゼンターとして登壇した私立灘高等学校3年生でクリエイターのTehuさん(18)は「自分のアイデアを披露できる場を探していた。エネルギッシュな150人が集結したTEDxYouth@Kyotoは僕にとっての最高の場所になった」と語った。

登壇した京都大学教授で霊長類学者の松沢哲郎さん(63)は「登壇者や観衆が自分の興味・関心のあるものとは違った分野の話を聞くことで、さらに自分自身を喚起させるものが見つかったのではないか。それが、TEDxの醍醐味だと思う」と語った。

白や胡桃色で統一された内装、スピーチやパフォーマンスを効果的に魅せるための舞台照明など、芸術大学ならではの装飾やDJの選曲によるBGMで会場は参加者が心地よいと思える雰囲気だった。

こうした会場作りも含め、学生がいちから作り上げるイベントとしてはかなりレベルの高いものだったと思う。司会を務めた立命館大学4年生川嶋紗由美さん(22)は「富士ゼロックスをはじめとする、企業や大学の協賛のお願い、登壇者の選定もすべて学生が行った。一人ひとりが自分の役割以上に動いてくれた結果だと思う」と運営メンバーを讃えた。

セッション合間の交流会ではプレゼンターはもちろん、意識の高い観衆同士が交流し活発に意見交換した。一つでも多くのアイデアを盗みたいと思う参加者が登壇者を輪で囲う光景が頭に焼きついている。

イベントの運営をディレクターとして支えた京都大学大学院生の浅野倫矢さん(24)は「モチベーションや意欲のある人が集まり、熱気あるイベントになった。今回の参加者が自分の可能性に気づいて、明日から動いてほしい」と参加者にエールを送った。

新しい発見は自分の得意分野の可能性を広げてくれる。まさに『Possibility of Ideas』のテーマにふさわしいイベントになったのではないだろうか。

なお、9月29日に京都外国語大学森田記念講堂で日本最大規模のTEDx イベントとなる予定のTEDxKyoto 2013が開催される。『序・破・急』をテーマに形を変えたアイデアが再び京都に表れることを楽しみにしたい。

・TEDxKyoto http://www.tedxkyoto.com/

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