2014.04.22 11:20

【学生記者が行く】「ココウェル」水井裕社長に聞く

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記者:服部英美

ココウェル(大阪市都島区)は、フィリピンで生産されたココナツを使った食品や化粧品、雑貨の製品開発や輸入販売を行う。学生時代からフィリピンに関心を持ち同国の環境と貧困の問題解決に挑み続ける水井裕社長に事業の現状などを聞いた。


――少年時代から環境問題に興味があったと聞く

 「ボーイスカウトに所属していたため自然と触れる機会が多く、環境の保全に関心があった。1997年の京都議定書採択に関連して、学生が各国の代表として温室効果ガスの削減について話し合う模擬サミットを大学の授業で行った。自分はフィリピン大統領の役を務め、現地のゴミ問題に関心を持った」

 「大学卒業後の2001年、発展途上国の環境問題を知るためフィリピンに3カ月間留学。マニラのゴミ山を訪れた際、ゴミを売って生活する貧困層の人々を目の当たりにした。廃棄物を削減する方法を探るために現場を訪れたのだが、ゴミがなくなれば、そこで暮らす人々の生活の糧がなくなってしまう現実に矛盾を感じた。『この国で何かしたい』という思いを抱えたまま帰国。その後、知人から土産でココナツオイルをもらったことがきっかけで、ココナツについて調べ始めた」

 ――ココナツとフィリピンの関わりは

 「ココナツは果肉部分を食用にするだけでなく、殻を炭に加工したり、葉を家の屋根に使ったりするなど現地の生活に密着しており、廃棄する部分が少ない。フィリピンの農村部に自生していて、人口の3分の1がココナツに関する仕事に従事するほど重要な産業資源だ。地方から仕事を求めて都会に出てきた人は、仕事を見つけられなかったり、失ったりすると最終的にゴミ山に行き着く。貧困問題を根本から解決するため、地方のココナツ農家を支援する会社を04年8月に設立した」

 ――事業化の道のりは

 「設立当初から原料のオイルを輸入し、化粧用と食用のオイルを半年ほどかけて商品化した。現地の工場を回り、品質や雇用基準を確認し、継続して取引ができるかを自分の目で確かめた。当時、ココナツオイルは日本で知られていなかったため、まずは使ってもらおうと、友人が出店するフリーマーケットでの販売から開始。少しずつファンを増やしていった」

 ――経営でのこだわりは

 「93年に日本でナタデココが流行した際、現地で雇用が増え、設備投資も行われたが、一過性の流行だったため、多くの人が失業した話を現地の人から聞いた。現地の人を支援するうえで一番大事なことは事業の持続だと考え、ココナツを専門にしている」

 「ココナツは収穫量が天候に左右されやすいうえ、オイルの原料となる果実の胚乳を乾燥させた部分は、大企業が安い値段で輸入することが多く、現地の農家は採算が合わない農業を強いられてしまう。そのため、せっけんやリップクリームなど付加価値の高い商品に使用するオイルを小規模農家から買い取り、現地の会社とともに製品開発に取り組み、技術の普及に努めている。日本の企業と提携すれば、短期間で日本人向けの商品を開発できるが、時間がかかってでも現地の人を雇用することにこだわっていきたい」

 ――創業10年目を迎えた

 「現地の生活水準も向上し、関係する農家の数も増えてきた。3年前から商品の売り上げの一部をココナツ農家支援基金に充てるプロジェクトを開始し、オイルやアクセサリー雑貨の製造に使用する機械を現地の農家に提供してきた。また、100%天然の原料を使い、品質にこだわってきたので『ココウェルの商品しか使えない』と顧客に言っていただけることがうれしい。今後は、ココナツやフィリピンをより多くの日本人に知ってもらうため、ココナツ専門のカフェを日本で開きたい」

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記者プロフィール

服部英美

服部英美

役職 : 広報部リーダー
卒業 : 大阪大学文学部
出身地 : 愛知県名古屋市
誕生日 : 1990年7月14日
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